新卒社会人1年目の日常 (2)

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 入社式的なのが始まる前に、その場にいた同期10人を軽く紹介する。鼻筋の整っている鈴木、筋肉質の渡辺を筆頭とする理系男子8人。絶妙なぽっちゃり具合で定評のある朝比奈を筆頭とする女性2人。僕が集合場所についた時には、すでに全員が揃い各々の席に座っていた。

 女性2人は隣同士で雑談に花を咲かせ和気あいあいとしており、一方、男共は携帯をいじるか書類を読むか下を向いてもじもじしていた。こういう時、男という生き物は本当にどうしようもないなと感じる。圧倒的コミュニケーション能力の低さ。社会適応力の低さ。それは人間力の低さ。昨今、我が国では女性の社会進出が進み、男尊女卑の考えはほぼ消えた。最近ではむしろ女性の立場の方が上に感じる。そういった背景にあるのは、こういった男の弱さだ。
 僕は、その場にいた男全員をあざ笑った。

 話を戻そう。唯一空いていた隅の席に腰を下ろした僕は、入社式的なのが始まるまでの時間をどうするか作戦を練った。この場にいる10人は、おそらく今後何十年と働くであろう会社の同期。仲良くなるに越したことはない。隣の男に話しかけようか、はたまた女性達の雑談に入り込もうか。そしてある結論にたどり着いた。

 沈黙し、10人全員を睨みつけた。鋭い眼光で。

 これは、しゃべりかける勇気がないとか緊張していたとかでは決してない。決して。仲良くなる前に威嚇したのだ。なめられちゃいけない。学生時代から根付いたカースト上位ぶりたい体質が僕の社会人生活を邪魔する。
 結果として、同期は僕のことを恐怖、もしくは奇異の目で見るようになった。勝った。そんなことを思っていると、あっという間に時はたち入社式的なのが始まった。

 それは、会社の偉い人から一人一人、入社証明書を受け取るだけの非常に簡易的なもので、意外にもあっけなく終わった。よし、家に帰ろう。帰宅の準備をしていると、新型コロナウイルスの影響で研修はなしで初日から部署に行き仕事してもらう旨が伝えられた。さらに、その後偉い人が口頭で発表した配属先の部署で、僕には同期がいないことが確定した。10人の中で同期がいないのは僕のみであった。彼らのホッとした顔は僕の心に突き刺さる。

ガックリと音を鳴らしながら肩が膝まで下がった。

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新卒社会人1年目の日常 (1)

1日目  4月1日(水) 雨

 社会人の朝は早い。AM6:00。眠い目をこすりながら鳴り響くアラームの音を止める。社会人1日目が幕を開けた。
 朝食を済ませ、スーツを着用。大量のワックスを手に取り髪をオールバックにする。鏡に写った自分の顔には、まだ見ぬ今日そしてこれからの日々への期待と不安が入り交じっていた。昨日までのお気楽大学生の自分とはおさらばだ。ふぅと一息ついてから玄関の扉を開き、社会人の第一歩を踏み出した。

 

 通勤は電車と徒歩を駆使して30分ほどかかる。会社に向かって歩くと常に逆風が吹いているように感じた。足取りはとても重い。自分の存在は社会に拒絶されているのではないか。行くのを断念すべきではないか。そんな気がしたコンマ数秒後、足下から視線を感じた。

 そっと足下に目をやると、そこには小さな白い花が咲いていた。辺り一面コンクリートの中でたった一輪、純白で美しい彼女は力強くたっていた。劣悪な環境にも負けず必死に食らいついて今を生きようとしている彼女の姿勢に感情を刺激された。自分も頑張ろう。彼女を見ているとなんだか自分もそんな風に思えた。『サオリ、ありがとう。仕事頑張るわ。』僕は、なんとなく彼女をサオリと名付け、再び会社へ向かう。足取りはとても軽い。

 会社の前にたどり着くと、初出社からくる独特の緊張感が全身にまとわりつく。声に出さない意気込みをして集合場所へ足を運んだ。
 集合場所には、全体で200人いるはずの同期のうち10人がいた。俗にいう新型コロナウイルスの影響が響き、全員での入社式と研修の中止が宣言されており、ここにいる10人で入社式的なのをやる旨が伝えられた。
 この一連の流れで僕が思ったことは、ただ一つであった。『この感じだと初日は、入社式的なのが終わったらすぐに帰れそうだぞ。』ニヤニヤが止まらなかった。

  

 そう、この時の僕はこの後起きる悲劇を何一つ予想していなかった。

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